#法改正対応 #リコール(食品回収) #HACCP

「万が一」に備える!法改正に対応した食品回収(リコール)の初動対応と、被害を最小限に抑える体制づくり

公開日:2026/03/10 | 執筆者:食品安全コンサルタント
リコール(食品回収)の完全マニュアル

「お客様から『商品に金属片が入っていた』と電話があった。どう対応すればいい?」
どんなに厳格な品質管理を行っていても、ヒューマンエラーや機械トラブル等による「事故」の可能性をゼロにはできません。いざ自主回収(リコール)が必要になる事態が発生した時、初動を間違えると企業の社会的信用は完全に失墜してしまいます。

本コラムでは、2021年の食品衛生法改正によって「完全義務化された行政への報告ルール」と、それに向けた具体的な対応手順について解説します。

2021年 食品衛生法改正:自主回収の「行政への届出」が義務化

かつて食品の自主回収は、各自治体の条例に任されており、全国統一のルールはありませんでした。しかし法改正により、以下のいずれかに該当する場合は、直ちに国(厚生労働省)へ報告することが法的義務となりました。

  • 食品衛生法違反(または違反のおそれ):食中毒菌等の汚染、硬質異物(金属、ガラス等)の混入など、健康被害のリスクがある場合。
  • 食品表示法違反:アレルゲンの表示欠落、消費期限の誤印字(実際より長く表示)など。

※アレルゲンの表示ミスによる回収は非常に多発しています。これも直ちに報告義務の対象となる点に注意が必要です。

報告書の入力内容:厚労省「食品衛生申請等システム」

実際の届出は、保健所に紙を持っていくのではなく、オンラインの「食品衛生申請等システム」を通じて行います(※事前にアカウントの取得が必要です)。

▶ 厚生労働省「食品衛生申請等システム」の公式サイトを開く

いざという時に入力画面を見てパニックにならないよう、報告画面で要求される主な登録項目(中身)のイメージを以下にまとめました。

🌐 食品衛生申請等システム > 回収情報入力画面(イメージ)
■ 回収クラス分類(健康への危険性の程度) *
CLASS Ⅰ (重篤な健康被害) / CLASS Ⅱ (一時的な健康被害) / CLASS Ⅲ (健康被害はない) から選択
■ 商品名・包装形態・内容量 *
例:○○ミックスサラダ(150gプラ容器入り)
■ ロット番号・消費期限/賞味期限 *
例:ロット番号「24X01」、消費期限「26.03.15」
■ 回収の理由(発生・発覚した経緯) *
例:消費者より「青色のプラスチック片が混入していた」と申し出があり、調査の結果、製造ラインのベルトコンベアの一部が破損・欠落していたことが判明したため。
■ 販売先・対象地域・販売数量 *
例:関東エリアのスーパーX全店舗、出荷数量:1,500パック

※実際のシステムでは、商品の画像データ(パッケージ写真)のアップロードなども求められます。対象となる商品情報(写真、一括表示の内容など)を平時からすぐに取り出せるようにしておく「製品説明書」の整備が不可欠です。

被害を最小限に抑える「3つの社内体制」

リコールの報告システムはあくまで結果(事後)の対応です。本来重要なのは、回収の範囲を最小限に留める「トレーサビリティ」と、社内の「エスカレーションルール」です。

① 「誰に」報告するかを決めておく(エスカレーション)

クレームを受けた現場スタッフが「怒られたくないから」と隠蔽すると事態は最悪の方向へ向かいます。異常を発見した場合は、必ず「食品安全チームリーダー(品質保証責任者)」へ15分以内に一報を入れる、といった明確な報告ルールを定めます。

② 回収の範囲を絞り込む「トレーサビリティ」

「いつ・誰が・どの原料を使って作ったか」という製造記録(HACCPの記録)の精度が、リコールの明暗を分けます。記録が杜撰だと「あの日に作った商品、全部怪しいから全量回収しよう」となり、被害額が数千万円に跳ね上がります。記録がしっかりしていれば「ロットAだけ回収すれば良い」と被害を最小限に抑えることができます。

③ 模擬リコール(年1回の訓練)

JFS規格などでは「1年に1回以上、回収の手順をテスト・検証すること」が求められます。架空のクレームを想定し、実際に販売先リストをリストアップし、国への報告書のドラフトを作成する「机上訓練」を必ず行いましょう。

まとめ:回収体制はHACCPの「最後の砦」

どんなに強固なHACCPシステムを構築しても、事故リスクは存在します。「絶対に事故を起こさない」という誓いと同時に、「起きてしまった時にどう動くか」を冷静に準備しておくことこそが、本当の「危機管理(食品安全マネジメント)」なのです。

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