「お客様から『商品に金属片が入っていた』と電話があった。どう対応すればいい?」
どんなに厳格な品質管理を行っていても、ヒューマンエラーや機械トラブル等による「事故」の可能性をゼロにはできません。いざ自主回収(リコール)が必要になる事態が発生した時、初動を間違えると企業の社会的信用は完全に失墜してしまいます。
本コラムでは、2021年の食品衛生法改正によって「完全義務化された行政への報告ルール」と、それに向けた具体的な対応手順について解説します。
かつて食品の自主回収は、各自治体の条例に任されており、全国統一のルールはありませんでした。しかし法改正により、以下のいずれかに該当する場合は、直ちに国(厚生労働省)へ報告することが法的義務となりました。
※アレルゲンの表示ミスによる回収は非常に多発しています。これも直ちに報告義務の対象となる点に注意が必要です。
実際の届出は、保健所に紙を持っていくのではなく、オンラインの「食品衛生申請等システム」を通じて行います(※事前にアカウントの取得が必要です)。
いざという時に入力画面を見てパニックにならないよう、報告画面で要求される主な登録項目(中身)のイメージを以下にまとめました。
※実際のシステムでは、商品の画像データ(パッケージ写真)のアップロードなども求められます。対象となる商品情報(写真、一括表示の内容など)を平時からすぐに取り出せるようにしておく「製品説明書」の整備が不可欠です。
リコールの報告システムはあくまで結果(事後)の対応です。本来重要なのは、回収の範囲を最小限に留める「トレーサビリティ」と、社内の「エスカレーションルール」です。
クレームを受けた現場スタッフが「怒られたくないから」と隠蔽すると事態は最悪の方向へ向かいます。異常を発見した場合は、必ず「食品安全チームリーダー(品質保証責任者)」へ15分以内に一報を入れる、といった明確な報告ルールを定めます。
「いつ・誰が・どの原料を使って作ったか」という製造記録(HACCPの記録)の精度が、リコールの明暗を分けます。記録が杜撰だと「あの日に作った商品、全部怪しいから全量回収しよう」となり、被害額が数千万円に跳ね上がります。記録がしっかりしていれば「ロットAだけ回収すれば良い」と被害を最小限に抑えることができます。
JFS規格などでは「1年に1回以上、回収の手順をテスト・検証すること」が求められます。架空のクレームを想定し、実際に販売先リストをリストアップし、国への報告書のドラフトを作成する「机上訓練」を必ず行いましょう。
まとめ:回収体制はHACCPの「最後の砦」
どんなに強固なHACCPシステムを構築しても、事故リスクは存在します。「絶対に事故を起こさない」という誓いと同時に、「起きてしまった時にどう動くか」を冷静に準備しておくことこそが、本当の「危機管理(食品安全マネジメント)」なのです。
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